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【映画】『ドラゴンヘッド』 [雑記]

知り合いの方の強い薦めで『ドラゴンヘッド』を観ました。もちろんDVDで。
…なんだこれ?
始まって10分で一切の興味を失いました。
トンネルの中で事故を起こした新幹線の中で目覚めた妻夫木聡が頭抱えたり、つまずいたり、ふらついたり、これで10分。
馬鹿にしてんのか。
あとは、いじめられっ子余って発狂しちゃった山田孝之、彼の目を盗んで車体の下に隠れたSAYAKA登場。なにやら叫んだり戦ったりして新幹線の屋根の上から換気ダクトに飛び移ってトンネル崩落、ペストに罹患したオバQみたいなゆかいメイクの山田孝之が死亡。
↑ここまでで40分。実に全体の1/3です。効率悪い語り口だなあ。
この戦闘もまたあくびが出るほど間延びしてまして、その後ろでおろおろしているだけのSAYAKAはボソボソしゃべるので台詞が聞き取れない。
あと、得意げに何度も何度も映し出される300系のセットがしょぼい。
これなら、出発のときは100系だったのが、途中の最後尾で300系、到着するときには0系になっているという『ハンテッド』のインチキ編集の方がよほど面白いです。

外の世界に出た妻夫木とSAYAKAが白い灰が延々と降り積もるモノクロームの世界を小田原まで歩き通すと、おっさんばかりの集団に囲まれ、「なかったことにするんだ」と訳のわからないことをつぶやくリーダー、寺田農に斬首されそうになります。
さすが、かつて天空の城ラピュタの主になり損ねた男、人をゴミ扱いするのに躊躇いがありません。
そんな絶体絶命のタイミングで、(いったい何の目的だったのか不明ですが)藤木直人ほか一名の自衛官たちがベンツで特攻を仕掛けてきます。
彼らと合流した妻夫木&SAYAKAは、ベランダからクジラ3頭分ぐらいの大量の血が滴っているビルで一休み。
なにもこんなところで…。
そこで「ほか一名」(近藤芳正)の自衛官が、今回の大災害の原因を怒りながら説明してくれます。
「畜生!龍脈が、龍脈が乱れやがった!」
…。
あのさあ、漫画ならこの程度の説明でいいかもしれんけど、実写映画でこんな手前味噌な説明でどうすんの?
ロビーの自衛官同士の冗長なやり取りがあって、地下室で変な頭をした少年二人登場。
ジャガイモをあしらったおしゃれ帽子かと思った頭は、恐怖におびえる兄弟を見かねた父親によるロボトミー手術の跡でした。スキンヘッドに出鱈目に走る縫い跡。
なーんだ。VFXが下手すぎたのかぁ。これですっきりしました。
ついでに、両親はとっとと自殺してまして、死にぞこないの母親に止めを刺す刺さないで藤木&妻夫木、(悪)夢のイケメン2ショット。
救いがねえなあ。

このあと、SAYAKAを独り占めしたくなったヤリたい盛りの藤木直人に銃を突きつけられた妻夫木がひたすら命乞いしたりします。
そこでタイミングよく発生した噴火から逃れる途中で車がひっくり返って、おしゃれ兄弟1名、藤木が死亡しても、なぜか妻夫木&SAYAKAコンビは無傷。
さらに妻夫木に至ってはそのあとヘリコプターから落下しても無傷です。
なんだこいつらのアメコミヒーロー以上の頑丈さは。

妻夫木が有り余る生命力に任せて東京に到着し、自宅マンションでなにやらショッキングなものを見たようですが、それはごっそりカット。
序盤で事故の規模をまったく裏付けない綺麗な死体とか、山田くんが瀕死の教師を竹刀で撲殺するとことか、ムスカ寺田が処刑しまくった挙句ゴミのように積み上げた死体とか、悪趣味なモンばっかり露悪的に描くくせに、こういう肝心なところはヒントもなしかよ。
この監督、情報の取捨選択を放棄してます。飯田譲治…。
この破壊しつくされた東京の街はかなり丁寧に描かれてまして、随分お金がかかっているのはわかりますが、既に終盤に差し掛かってなお誰一人感情移入できないため、まるで感慨が沸きません。
あ、ゆかいメイクの山田孝之の幻がサービスショットで登場します。嬉しくねえなあ!

面倒くさいので細部を省きますと、このあと妻夫木君は渋谷駅の地下でホームレスになりかかっていたSAYAKAを発見。
そこで再び噴火による火山岩塊が隕石のように降り注ぎ、地下から脱出する途中で、痛覚を失っているおしゃれ兄弟の生き残りが直立不動で炎上している光景に出くわします。
わあ、悪趣味だなあ。こんなんじっくり映すなよ。
どうやらこの辺が世に言うクライマックスらしく、どさくさまぎれに妻夫木にコクったSAYAKAの滑舌が妙に良くなっていましたが、感情移入する気が失せていたのでどうでもいいです。
高台に逃げた妻夫木&SAYAKAコンビは、都心部がみるみる隆起して噴火するさまを目撃します。
わおー。すげーやー。(あ、でっかい鼻糞が採れたよ!)
「生きてやるー。生きてやるぞー」
妻夫木が絶叫して、そこで映画が終わってしまいました。

…。
なんだこれ?
原作は未読なので存じませんが、本作は余りに説明不足の舌たらずでして、SAYAKAの滑舌に合わせたのかも知れませんが、釈然としないことこの上ない。
繰り返しますが、情報の取捨選択ができていない。
せめて次々に襲い掛かるトラブルを息つく間もなく描けているならパニックものとして見られるのでしょうが、メリハリが無さ過ぎて緊張感など皆無です。
パニックものとしてはテンポが無く、人間ドラマとしては底が浅い。

しかし、ヤマも落ちもないこの映画最大の見所はエンドロールに隠されていました。
スクロールしていくスタッフの肩書きで気になったのが、
「ヘアメイク(SAYAKA)」
というもの。
げっ!こいつだけ専属ヘアメイクかよ!
ところがこんなのはまだまだ前フリでした。
そのすぐあとにさらに驚くべき肩書きが現れました。

「演技指導(SAYAKA)」

ガ━━Σ(゜Д゜|||)━━ン!!
わははははははは!
演技指導が必要な素人を主役に起用してんじゃねえ!!!!!(でも超大作w)
いやいや、百歩譲って何らかの指導が必要だったとしても、表には出さないのが人情だと思うのですが。
2世芸能人の大根演技に箔つけてどうするんだよ!
三度繰り返しますが、本っ当に情報の取捨選択ができてねえなあ!

先日観た『シュアリー・サムデイ』も学芸会の続きみたいな作品でしたが、エンドロールぐらいは無難にこなしていました。
資金集めに苦労したのがむしろ幸いしたのか、無駄遣いは鼻につきませんでしたし、一箇所も笑えませんでしたが小ネタがふんだんに盛り込まれているので溜息をついているあいだは寝ずに済みます。
『ドラゴンヘッド』の本編は溜息さえつく気になれません。ラストの渋谷駅で非常食食べて無感情になった群衆は本作を観た人の姿に他なりません。
挙げ句出来損ないのエンドロールで笑いをとるなんて、掟破りにもほどがあります。
例えれば、あらかじめ頭部を地中に埋めてから寝技を繰り出すようなものでして、命懸けというより初めから既に死んでいます。
開始10分で既に死に、エンドロールの墓碑銘で湧かせる。
SAYAKAのヨイショ映画と見せ掛けて、ラストで裏切る。
空虚を虚無で購うがごとき作品です。

どうしても時間とお金の有り難みを実感したい人には自信を持ってお勧めしますが、同じ理由から公開時に劇場で観賞された方々にはお悔やみ申し上げます。(合掌)
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つぼっち

原作を読んだことがありますが、さっぱりわけが分かりませんでした。
そんな作品を映画化・・・
想像しただけで、恐怖に震えてしまいそうです。
実際、このレビューを読んだだけで震えてしまいましたが(笑)。
by つぼっち (2010-08-05 00:21) 

クロヒコ

望月峯太郎も好みが分かれる作家さんみたいですね。
原作は筋道だった説明とかより、シチュエーションごとの不気味さ、恐怖、絶望感を堪能するもののようです。
どうせ単発的な恐怖を繰り出すのなら、ドラマチックな部分もまたコンパクトに連発させればいいのに、見せたいところがごちゃごちゃになって、かつ間延びしているのでダレてくるんです。
エンドロールで爆笑した作品は初めてでして、やっぱり映画は最後まで観るものだと痛感しました。

震えていただき、うれしい限りです(笑)
by クロヒコ (2010-08-06 23:35) 

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