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断片的な知識から悪口を言おう。(藤沢時代劇編) [レビューなど]

>『必死剣 鶏刺し』最後の40分を見た。藤沢時代劇は『武士の一分』しか見ていないのだが、今回もたったこんだけの話をダラダラダラダラ2時間かよ、とも思う。トヨエツの剣豪オーラがなさ過ぎて池脇千鶴や岸辺一徳の存在感に依存してやしないか。なんにせよ尺が長すぎて間延びが酷い。(続く)

>『必死剣 鶏刺し』『武士の一分』を最短で表すなら「パワハラ」の一語に尽きる。はっきり言って不快だ。ダラダラ続くからもっと不快だ。こんな映画観て面白いか?「藤沢作品は日本人の心だ」みたいなこと言ってる人がいたが、理不尽な階級社会、硬直化した組織、孤立する被害者…確かに日本社会だなw

>まあ、藤沢周平の作品にもいろいろあると思うが、よりによってこんな話ばかり映像化したがる連中の性根の濁り具合が恐ろしい。


↑というツイートを連投しました。
正確には『必死剣 鳥刺し』でしたね。「鶏刺し」ってなんだ。刺身か。
トヨエツ、頑張ってるとは思いました。最後の殺陣も渾身の演技でしょう。
でもね。
風呂入るシーンがあるのですが、トヨエツって案外乳輪がデカイ…じゃなくて!貧弱なんですよ!筋骨が無いのっぺりな身体。
佇まいはそれっぽかっただけに、殺陣で見せたいのなら物理的アウトラインをきちんと作って欲しいんですわー。
あるいは初めから肉体なんか見せない。だからその後に見る殺陣も、模造刀としか思えなくなります。
むしろ吉川晃司の方がずっと剣豪らしく見えました。藩主の分家で剣豪って設定そのものがおかしいと思いますが。
東洋人だから、っていう言い訳は聞きませんよ。『グッド・バッド・ウィアード』のイ・ビョンホンとかご覧なさい。そりゃもう凄いんですから。いや、『少林少女』の仲村トオルでもいいや。あんな作品には勿体ないぐらいちゃんと身体を作ってました。

池脇千鶴の時代劇特性は相変わらず盤石かと。時代劇で間を持たせられる女優さんですね。
ただ、あんな濡れ場はいらんだろ、とも思いました。どうせ露出もしないのならあんな直裁的な場面はいらない。そもそも濡れ場自体が作風とは合わない。それっぽく匂わせるだけでいいはずです。
見せないなら濡れ場なんかいらない。形だけの濡れ場なんてAVに失礼です。(違う)

でまあ、「鳥刺し」ってどんな技なんだろ?って思って見てたんですが…なんだよ「○○○○○」かよ!そら「必死」が前提だわ!
映画に「秘技」は数あれど、これ程がっかりさせられる技もそうはないかと。

閑話休題。
ツイートでも触れましたが、本作や『武士の一分』など近年流行中のパワハラ時代劇は社会の理不尽を経験し尽くした大人たちの、
「そうだよな、世の中なんてそんなにうまく行かないよな。俺たちは使い捨ての兵隊だったもんな。ああ、今生きててよかった!」
という、実に夢も希望もない後ろ向きな現状肯定のためにあるんじゃないかと。
そりゃ、現状に不満があったり、明日に夢を持ちたい人には不向きだよなあ。
過去の同系作品としては『切腹』が挙げられるでしょうか。おそらく今年のリメイク作品『一命』も、上記のような客層を当て込んでいるのだろうと推測します。
でもあちらは、組織の腐敗っぷりに終始せず、江戸前期という時代背景と密接に関わった武士階級全体の悲劇を背景にしています。「敵」のスケールがでかい。
たった一人で立ち向かうのなら、強力な敵を向こうに回すほど盛り上がります。
『武士の一分』一番のお笑いシーンは、クライマックスの「上司に向かってその口のききかたはなんだ!」という忘年会の課長的な台詞が飛び出すところです。これはそのまんま「敵」のしょぼさを表しています。
盲目となってなお、血を吐くような修練で剣の腕を磨き、倒す相手はセクハラ上司…(泣)こりゃあんまりです。
企業エレジーなら現代劇でやりゃあええんです。それをネチネチと時代劇経由でやるなや!褒めるなや!現実見ろ現実!

何歩か譲ってそういう話を作るなら、そういう話に適した見せ方があるはずです。
無駄に風景描写で叙情を醸し出したり、含みを持たせて(しかもあまり有効な伏線とはなっていない)間延びさせたりしないで欲しい。どうせろくな話じゃないのだから。
どうせ綺麗に作るのなら『雨上がる』のようにテーマと作風をきちんとリンクさせて欲しい。それが作り手としての筋の通し方だと思うのです。
「くだらねえ会社の腐った組織に翻弄されっぱなしの善良な主人公の怒りがついに爆発だ!」
という話なら、チャールズ・ブロンソンやスティーブン・セガール的なB級感で突っ走ればすっきり観られる…とは思うのですが。

問題は作劇そのものではなく、現代の「時代劇感」そのものにあるのかもしれません。
昨今時代劇を見たがる客層が、「景色とか雰囲気とかを妙に気にして、絵空事をあざ笑う、ゴシップ好き中高年」と想定されているのではないでしょうか。(下衆いのが好きならそれでいいんです!俺も大好きだ!)
そんな作り手の見通しこそが、「見栄えがよくて、しみったれた、実も蓋もない」作品が連発される理由じゃないかと思う次第なのです。

最後に。
でも去年は『十三人の刺客』はあんなにヒットしたわけで、周到に作れば悪趣味血みどろチャンバラだってイケると思うのです。(ラストにはむりやり現代的解釈に持ち込むような泣き言もありましたが)
時代劇は手間がかかって制約だらけという側面もありますが、日本映画だけが持つ何でもありのワンダーランドでもあります。
豊かな作例もあり、過去の名作に目を通すだけでも、面白くて客を呼べるものは作れると思うのですが。2011 1010 36.jpg
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