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【映画】『女医の愛欲日記』 [レビューなど]

2009年10月に「俳優・佐藤慶」を開催するにあたってラピュタ阿佐ヶ谷がニュープリントした、伝説のカルト作品です。
2010年5月から渋谷シネマヴェーラで開催している特集「実録!犯罪列島」のパンフレットでも鳴り物入りで紹介されており、鳴り物に弱い自分としては早速観に行ってみました。
結論から言いますと、「すげぇ…」。
すごいものに理由も裏付けもいらないのだと思いました。
『絞死刑』などで大島組の脚本家として働いていた深尾道典という人の監督作品です。監督が大島組ならキャストも大島組。
名優陣の気前のいい無駄遣いぶりも見所です。
迷宮入りとなった「熊本女歯科医殺人事件」をベースにしているとの触れ込みでしたが…。

続きはこちら


タグ:菅貫太郎
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去年観た映画のデータで遊ぶ [レビューなど]

去年に観た映画は再見、短編をを含めて全部で370本でした。

(1月)
mishima
ああ爆弾
現代ポルノ伝 先天性淫婦
独立愚連隊
時をかける少女
トラ!トラ!トラ!
殺人カメラ
ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!
時をかける少女(アニメ)
狂い咲きサンダーロード
ゆれる
シッコ
ワイルド・パーティー
秒速5センチメートル
12人の優しい日本人
女囚さそり けもの部屋
ツィゴイネルワイゼン
プラン9・フロム・アウター・スペース(再見)
宇宙人東京に現る
アエリータ
火を噴く惑星

(2月)
不良番長 一攫千金
アラビアのロレンス/完全版
機動警察パトレイバー THE MOVIE
ゴッドファーザー
ヘルボーイ
将軍家光の乱心 激突
機動警察パトレイバー2 THE MOVIE
ブラッド・ダイヤモンド
スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
インディー・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国
不良番長 やらずぶったくり
遊星よりの物体X
ベン・ハー

(3月)
仮面の宿命 美しき裸天使
十戒
ニューヨーク1997
ダーウィンの悪夢
ゆきゆきて、神軍
天国の大罪
スター・ウォーズ/帝国の逆襲 特別篇
ボウリング・フォー・コロンバイン
私たちは忘れない
ベイブ
(4月)

ヘビー・メタル
ドッジボール
燃えよ!ピンポン
日本暗殺秘録
三匹の侍
ザ・ゴキブリ
少林少女
不都合な真実
自然の歴史(組曲)
部屋
地下室の怪
対話の可能性
陥し穴と振り子
男のゲーム
セルフポートレート
闇・光・闇
アリス
Tommy/トミー

(5月)
吸血鬼ゴケミドロ
動物農場
生まれかわった為五郎
あらかじめ失われた恋人たちよ
帰ってきたヨッパライ
狼の紋章
御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判
ゴジラ対メカゴジラ
メカゴジラの逆襲
惑星大戦争
オテサーネク
シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック
J.S.バッハ-G線上の幻想
庭園
ジャバウォッキー
家での静かな一週間
オトラントの城
悦楽共犯者
フード
フローラ
石のゲーム
ワイズマンとのピクニック
アナザー・カインド・オブ・ラブ
スターリン主義の死
肉片の恋
プラハからの物語
日本妖怪伝 サトリ
ガメラ対大悪獣ギロン
バーン・アフター・リーディング
ゴジラ ミニラ ガバラ オール怪獣大進撃
怪獣大奮闘 ダイゴロウ対ゴリアス
必殺!
地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン
日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里
宇宙からのメッセージ(再見)
必殺!ブラウン館の怪物たち

(6月)
スラムドッグ$ミリオネア
盲獣
吸血蛾
エノケンの法界坊(縮刷版)
花咲爺
はじめに目ありき
ティラミス
アフター・スクール
レベッカ
ファイター
昨日消えた男
ボーン・アイデンティティー
ウルトラミラクルラブストーリー
チェ 28歳の革命
チェ 39歳 別れの手紙
しとやかな獣
幕末太陽傳
かぶりつき人生
遠い明日
濡れた唇
恋人たちは濡れた
嗚呼 満蒙開拓団
羅生門(デジタル完全版)
鉄男
一条さゆり 濡れた欲情
宵待草
濡れた欲情 ひらけ!チューリップ
地獄
赫い髪の女
地獄門
もどり川
青春の蹉跌
濡れた欲情 特出し21人
四畳半襖の裏張り

(7月)
赤線基地
妖婆
黒蜥蜴


雨女
トランスフォーマー/リベンジ
野火
快楽学園 禁じられた遊び
赤線玉の井 ぬけられます
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
バス・アマリリス
電柱小僧の冒険
0課の女 赤い手錠
本能
サインはV
放浪記
博奕打ち 総長賭博
修羅雪姫 怨み恋歌
トラック野郎 御意見無用
∀ガンダム I 地球光
∀ガンダム II 月光蝶
カックン超特急
トラック野郎 男一匹桃次郎
トラック野郎 爆走一番星
道成寺
恋や恋なすな恋
子連れ狼 三途の川の乳母車
瞳の中の訪問者
火の鳥
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
蛇娘と白髪魔
剱岳 点の記

(8月)
浮雲
世界残酷物語
ワン・ミス・コール
夜の流れ
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
ならず者
アルプス颪
凸凹猛獣狩
第七天国
キートンのセブン・チャンス
プレイタイム〈新世紀修復版〉
阪東妻三郎傑作集
雄呂血
トランスポーター
呪怨
片岡千恵蔵傑作集
瞼の母
キートンの探偵学入門
愛の陽炎
フランケンシュタインの花嫁
浪華悲歌
西鶴一代女
TOMORROW 明日
娘道成寺
満員電車
地獄
大番
真昼の暗黒
サマー・ウォーズ
斬る
その場所に女ありて
大いなる幻影
巨人と玩具
日本残酷物語
水俣 患者さんとその世界
透明人間
安藤昇 わが逃亡とSEXの記録
怪談片目の男
イベント・ホライゾン

(9月)
怪猫 呪いの沼
十三人の刺客
劇場版 虫皇帝
屋根裏のポムネンカ
くノ一忍法
執念の蛇
一寸法師
アマゾン無宿 世紀の大魔王
結婚相談
呪いの館 血を吸う目
忍者武芸帖 百地三太夫
博徒対テキ屋
博徒七人
鬼火
生きている小平治
丹下左膳餘話 百萬兩の壺
丹下左膳餘話 百萬兩の壺[玩具フィルム]
女地獄 森は濡れた
錆びた炎
愛の亡霊
愛のコリーダ
ルートヴィヒ(完全復元版)
人情紙風船
東京ジョー
屋根裏の散歩者
俺にさわると危ないぜ
野獣を消せ

(10月)
サマー・タイムマシン・ブルース
女番長 野良猫ロック
ラブホテル・コレクション-甘い記憶(東日本編)
縄張(しま)はもらった
天国と地獄
三重スパイ
暗黒街の弾痕
爆弾男といわれるあいつ
ラブホテル・コレクション-甘い記憶(西日本編)
指導物語
真田幸村の謀略
ヒトラー~最期の十二日間~
エイリアン
パットとマット/クロスワードパズル
樫の葉が落ちるまで

ライオンと歌
棺の家
ぼくらと遊ぼう!/おかゆの話
ファーゴ
十兵衛暗殺剣
ロボゲイシャ
幽霊列車
パットとマット/テレビ
視覚の外
フルヴィーネクのサーカス
探偵シュペイブル
家での静かな一週間(再見)
ぼくらと遊ぼう!/お魚の話
サウスパーク無修正映画版
陸軍
パットとマット/遠出
善良な兵士シュヴェイク2/列車騒動の巻
ロマンス
飲みすぎた一杯
ジャバウォッキー(再見)
ぼくらと遊ぼう!/冬眠の話
必勝歌
網走番外地
赤い殺意
夜の女たち
飢餓海峡
点と線
特攻大作戦

(11月)
集団奉行所破り
狼と豚と人間
仁義なき戦い 広島死闘編
仁義なき戦い 代理戦争
仁義なき戦い 頂上作戦
仁義なき戦い 完結編
パットとマット/運動
灯台守
電子頭脳あばあさん
ナイトエンジェル
レオナルドの日記
ぼくらと遊ぼう!/水辺の話
犬と猫と人間と
祇園祭
マイケル・ジャクソン THIS IS IT
富士の地質
戰ふ兵隊
エル・スール
ミツバチのささやき
動くな、死ね、甦れ!
御用牙 鬼の半蔵地獄責め
第三次世界大戦 四十一時間の恐怖
なまくら刀(塙凹内名刀之巻)
浦島太郎
漫画 瘤取り
火の用心
古寺のおばけ騒動
熊に喰われぬ男
狐と小鳥
ガリヴァー奮鬦記
バグダット姫 [最長版]
喜劇 とんかつ一代
遊星からの物体X

喜劇 トルコ風呂王将戦
不良番長 出たとこ勝負
レスラー
レザボアドッグス
愛のむきだし
私は猫ストーカー
buy a suit スーツを買う
東京レンダリング詞集
日本春歌考
本日またまた休診なり
温泉スッポン芸者(再見)
札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥
トラック野郎 突撃一番星

(12月)
イングロリアス・バスターズ
大悪党
リトル・アンブレラ
ネコのお絵かき
けしのみ太郎 病気ってどうやってなおすの?
イモムシくんは大スター
りんごのお姫様
ポルノギャンブル喜劇 大穴中穴へその穴
俗物図鑑
東京物語(再見)
晩春
悪名
続悪名
鴛鴦歌合戦
マルホランド・ドライブ
戦艦ポチョムキン 完全復元版
誓いの休暇
怪猫トルコ風呂
ぼくらと遊ぼう!/出会いの話
ぼくらと遊ぼう!/水辺の話(再見)
ネコの言葉
ネコのお絵描き(再見)
ネコの学校
ぼくらと遊ぼう!/犬の話
インランド・エンパイア
座頭市物語
ホステル
東海道四谷怪談

按摩と女
サヨンの鐘
チェイサー
3時10分、決断のとき
ウォッチメン
グラン・トリノ
フレンチ・カンカン
彼女について私が知っている二、三の事柄
人生に乾杯!
コストニツェ
エトセトラ
アッシャー家の崩壊
ディア・ドクター
母なる証明
ドン・ファン
花の生涯~梅蘭芳
夏時間の庭
扉をたたく人
湖のほとりで

エクセルに記録してるといろいろデータが判って面白いです。
例えば、上映時間の合計は30321.5分。秒は切り捨てていますが、シュヴァンクマイエルの短編で30秒のものがあったので「.5」が発生しました。
で、平均は約82分。短編がいかに多かったか、ということですね。
上映時間は長い順で次のとおり。

1.『ベン・ハー』(240)
2.『ルトヴィヒ(完全復元版)』(240)
3.『愛のむきだし』(237)
4.『アラビアのロレンズ/完全版』(227)
5.『十戒』(220)
6.『飢餓海峡』(183)
7.『インランド・エンパイア』(180)
8.『ゴッドファーザー』(175)
9.『祇園祭』(168)
10.『水俣 患者さんとその世界』(167)

こんな自己満足な遊びも楽しいお正月。

監督の隣で [レビューなど]

渋谷シネマヴェーラにて、『俗物図鑑』が始まる前のインターバルでぶどうパンを食べていたら、「すいません」と言って隣の席に老紳士が腰掛けました。
反対側の人と、
「杉作さんは、雨男だねぇ」
なんて話している。
こ、これは後で杉作J太郎さんとトークショーを行う内藤誠監督その人ではありませんか!
監督ご自身が映写機を回している現場で観賞したことはありますが(渡辺文樹監督。『天皇伝説』)、監督の隣で観賞するのは初めてです。
一気に緊張。
「サインお願いします!以前からファンだったんです」
なんて大嘘をぶっこけるはずもなく、上映まで前方のみを直視してました。

肝心の作品はといえば、基本的にキャストが素人(南伸坊、平岡正明、四方田犬彦ら)なので、間が持たないことこの上なく、山城新伍、安岡力也の次に達者だったのは巻上功一(ヒカシューのボーカル)でした。
ちなみにその次は大林宣彦か。
そんな微妙な作品でしたが、途中で内藤監督は何度かシートに後頭部をごんごん打ち付けていました。
本人いわく、「あそこはこうすればよかった」と自省してらしたそうです。

また、トークショーは杉作J太郎さんがこなれたヨイショ芸を見せ、滞りなく進行。
内藤監督は山城新伍のみならず、兄貴分の若山富三郎とも交流があったそうで、中国と国交回復する以前に「西遊記」を撮る企画があったそうです。
孫悟空→若山富三郎
三蔵法師→坂東玉三郎
猪八戒→高見山
沙悟浄→仲代達也
という凄いキャスティング。
国交がないからポシャったらしいです。
ちなみに高峰三枝子が仲立ちしたらしい。
ご本人は事もなげに話してますが、お客さんはこういう裏話を待ってます。
あ、快楽亭ブラックさん、プリングルスの中蓋をパチパチさせないでくださいね。

とまあ、こんな感じで、監督さんの隣で鑑賞できるなんて希有な体験をさせていただきました。
シネマヴェーラ最高♪

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『必勝歌』(1945) [レビューなど]

有名監督を召集して作らせたオムニバス形式のプロパガンダ作品。大雑把に括るなら「戦時下ちょっとイイ話」集だが、善し悪しの基準が人倫を超越した特攻礼賛作品である。戦死した特攻隊員の遺族を軍が酒席でもてなし、「はぁ~めでたいめでたい♪」と音頭を取るに至っては、絶句を通り越して吐き気を催す。子どもが頻繁に登場するが、大人は誰もが遠回しに「死ね」と諭している。公開時はほぼ壊滅していた戦艦が鈴なりだったり、カラ元気ゆえのファンタジーも悲しい。日本人が当時の狂信と思い上がりを忘れないための遺産である。資料的価値高し。(☆☆☆)



ここ最近、戦地で機関車を運転する「機関特業兵」を育て上げる過程を描いた『指導物語』、木下恵介が軍の要請で作ったものの内容は明らかな反戦映画『陸軍』など、立て続けにプロパガンダ映画を観ています。
その中でもぶっちぎりで発狂しており、無気力な笑いを誘うのが本作です。
なんでも近代美術館フィルムセンターの解説によると「情報局が募集した愛国歌の一等当選となった「必勝歌」を基に」した作品らしいです。
へー。
1945年の2月公開なんですね。
硫黄島の攻防戦の真っ只中であり、なんともすごい時期です。
ちなみに翌月には東京大空襲ですね。(前年末から東京はもう空襲されていましたが)

どこか南方と思われる塹壕の中で兵士たちが故郷に思いを馳せる、というシーンから始まるのですが、なぜかみんな息が白くなってます。
2月の公開にあわせていくつかのエピソードを同時進行で撮影したらしく、どこでもみんな息が白かったりします。
小学生が元気良く相撲をとりまくるシーンや北朝鮮がやってそうな少女歌劇団の群舞シーンなど、妙にちぐはぐな映像も挿入されていて統一感はありません。
監督は、津川雅彦の叔父さんにあたる早撮りで鳴らした名監督マキノ正博(雅弘)、後の世界的巨匠溝口健二ら、ほかに田坂具隆、清水宏といったすごい面々です。
特に溝口は不自由な環境下でお見合いに臨み、相手の出征を知ってなお悲壮な覚悟をもって結婚を望む女性のエピソードを担当したと思われます。
ちなみに、その女性を演じているのはずーっと後で市川崑作品の常連となり『犬神家の一族』で松子役を演じた高峰三枝子です。

他には飛行機好きが高じて父親に無断で少年兵に志願し、父親から叱責されるかと思いきや「お国のために死んで来い!」と力強く激励される少年は、まだ「沢村アキオ」を名乗っていた子役時代の長門裕之。
ちなみに、このことは斜め前に座っていたおじいさんが上映中に、
「ありゃ、長門裕之だ」
とおっしゃいまして、
「ちょっと静かにしてくれませんかねえ!」
と誰かから窘められていました(笑)
彼のおばに当たる沢村貞子も別のエピソードで出演しています。

本作の内容についてあれこれ言うよりも、本作の中で印象に残った台詞をいくつか紹介します。
「お前の兄は飛行機で体当たりした。日本国民みんなが体当たりの気持ちで事にあたれば勝てる!」
「お前、なぜ俺に無断で少年兵に志願した?俺が反対するとでも思ったのか?行ってこい!そしてお国のために立派に死んでこい!」
「~君は酒が強くて。飛行機の操縦は…そんなに上手くありませんでしたが肝が据わっていました。『俺は腕じゃない。腹で飛ぶんだ』と言っておられました」
もうこの頃になると、上下の別なく日本人の精神状態がいい感じで煮詰まっていたことがわかります。
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『赤い殺意』(1964) [レビューなど]

「妾の娘」というだけで牛馬のごとき待遇に耐えてきた鈍重な女が、ある災厄を経て人生を解脱するまで。バカ、クズ、小心者と各種取り揃えてねっちりみっちり描き尽くす「逆人間讃歌」ともいうべき今村節が炸裂。見ているだけで惨めで惨めで、真っ黒な笑いどころにいちいち受けないと身が持たない。しかし、その描写の執拗さゆえにラストの切れ味は鮮やか。バカの高らかな勝利宣言にはストーリー上のカタルシスがあるものの、人間辞めたくなる実感がそれを微妙に上回るさじ加減に脱帽。(☆☆☆☆)


この作品の笑いどころとは、観客が浮き世の憂さを晴らすためのものではありません。
笑った者の魂を汚し、脚を掴んでより低い次元に引きずり落ろしたうえで親しげに肩を抱いて、
「よく来たな。まあ一服」
と火を差し出すような、悪魔のもてなしです。
我々は、小心ゆえの激情を、卑屈ゆえのためらいを、惨めさゆえの甘えを、心当たりがありまくるために笑えません。
だからこそ、心を鬼にして笑わなければ、観客としての気楽さを維持できないのです。

最終的に主人公は「救われる」のですが、「報われる」わけではありません。
ここがミソでして、主人公がない知恵を絞った行動は何一つ実を結ばず、訪れた状況下でほんのちょっと巧く立ち回ったことで、他の連中より頭ひとつ抜け出すのです。
ほんの、頭ひとつw
この話は「説話」ではなく「童話」なんですね。
なんの教訓もない。ハッピーエンドはただのお約束にすぎない。
お話としてはきっちり落としておいて、でも逃げ場なんて作らない。
人間社会、ひいては世界の摂理とは天の彼方から地の果てまで目糞鼻糞の相対性に過ぎないことを暴きだし、「正義」や「愛」といった打算の無い絶対的価値観を毛ほども夢見させない。
スクリーン越しに架空の話を流しながら、観念的には観る者の胸ぐらを掴み、薄笑いを浮かべながら揺さ振るのです。
この作品は、観終わって劇場を後にしても観客の心に巣食って容易に離さない、メタ的な構造を抱えています。

色も形も果てもない光景を無造作に提示して、途方に暮れる連中をさんざ嘲笑ったあとで、
「嘘だよ~ん!」
って言いそうな気がします。
虚無を娯楽へ昇華させる男、今村昌平恐るべし!


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『ファーゴ』(1996)(改) [レビューなど]

ごろつきに依頼した偽装誘拐、のはずが事態はどんどん悪化して…。アメリカの田舎町で起こる殺人事件の顛末。まず、女性署長以外の登場人物がほぼ全てバカ。不運のドミノ倒しのように見える事件の流れは、気短で即物的で場当たり的な愚かさに対する、銃と車というアイテムの親和性を示している。学歴や立場を透過した、エゴイズムの肥大と想像力の欠如という現代の病理を、田舎の犯罪というシチュエーションに封じ込めてみせた傑作。(☆☆☆☆☆)


コーエン兄弟は本作のテーマを『ノー・カントリー』においてさらに深く掘り下げているように思います。(もっと救いがなくなりますw)
両作品に共通する「現代の病理」を象徴しているのが怪物的な人物。
本作品に、善悪の彼岸を越えたゲアという男が登場しますが、『ノー・カントリー』で静かに大暴れするシガーという殺し屋に容易く比定出来ます。
本作では「怪物」の性質までは語られなかったのですが、『ノー・カントリー』ではほぼ主役に昇格しています。
必然的に「病理」へのアプローチも変わっています。

それにしても。
コーエン兄弟の作品は上記のふたつの他に『バーン・アフター・リーディング』しか観てないんですが、バカを描くのがほんっと巧いんですねぇ。
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キャバレーミッション『ピンクシャンパン』のレビュー(改) [レビューなど]

佐清会の友人(F氏)のバンド、キャバレーミッションがCDアルバム『ピンクシャンパン』をリリースしました。
(公式サイト→http://www.c-mission.com/top.html


ピンクシャンパン

ピンクシャンパン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: RockandRollRecords
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: CD



まず、バンド活動を少しでも経験したことのある者としては、アマゾンで買えちゃうって時点で仰天です。
今日は発売記念ライブにお呼ばれしたので行って来ました。
CDを買ってきまして帰宅してからさっそくiTunesに落としたのですが、アルバム画像がヒットしません。
公式サイトにはありましたが、早いとこグーグルの画像検索とかでヒットするようになったらいいなあ。
ここにも載せたいんですが、著作権とか大丈夫なのかしらん。むう。

帯には、
「猥雑さが加速する、新世代キャバレーロックサウンド!」
って書いてあります。
キャバレーロックってなんやねん(笑)
ロックと銘打ってある明らかなバンドサウンドなのですが、曲はどっこいポップです。
正直、ジャンル分けは難しいのですが、安全地帯などのニューミュージックの洗礼を受けた世代の行き着いた、洗練されたポップセンスが冴えております。
そういった企みに満ちた曲に、エモーショナルな歌声が火を燈しております。
特にラストの「リップサービス」は珠玉のラブソングだと信じます。
もちろん技量やアレンジ等足りない部分はありますが、荒削りもまた魅力。より楽曲の輪郭が鮮明になっているも言えましょう。
モノは言いよう曲は聴きよう。
とはいえ、歌い手作り手にキャリアや名声があろうがなかろうが、つまらない歌より、工夫と情熱をそなえた歌が聞きたい。
唾をつけるタイミングなら早いに越したことはありませんぜ。

佐清会のF氏はドラムを担当しているのですが、粒立ちのしっかりした小気味良いドラミング。
このブログを御覧になっている好事家の皆さん、今のところ佐清会随一の出世頭になっているF氏とキャバレーミッションにエールを送ってくださいな♪
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存在感ってどこにあるかな(BlogPet) [レビューなど]

ジャンボたにしは存在感がほしいな。
存在感ってどこにあるかな

*このエントリは、ブログペットの「ジャンボたにし」が書きました。

『肉片の恋』 [レビューなど]

池袋新文芸坐のオールナイト「ヤン・シュヴァンクマイエル特集」観て来ました。
奇想に次ぐ奇想、疲れたので後半は寝てました。あーあ。
いくつかの短編は、以前買ったDVDで再チェックせねば。
ちなみに↓の入っているソフトは持っていませんが、これは気張って起きてました。

http://www.youtube.com/watch?v=UQkWrZw05P4

手を取り合って踊る肉片がかわいい!!
スクリーンで観られて良かったです。
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『御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判』 [レビューなど]

御金蔵破りをきっかけに暴かれる陰謀。巨根絶倫の町方「鬼の半蔵」の出方はいかに?時代劇にしては定番のお話ながら、豪華絢爛な脇役がはまりすぎて余りある。脂の乗りすぎた勝新と同様の名和宏の間に、何故か元祖天然キャラ緑魔子!小狡い上司に西村晃、悪徳検校に小池朝雄。その他諸々、もう美学さえ感じる憎い配役。トレーニングでちんこを鈍器で叩いたり米俵に突っ込んだり、小池一夫の狂ったディテールをかっちり盛り込みつつも、しっかり遊び倒した秀作エンターテイメント。(☆☆☆☆☆)


小池一夫原作のエロチック時代劇の映像化「御用牙」シリーズ第三作にして最終作です。VHSでソフト化されただけでも奇跡的な内容ですが、個人的には押しも押されぬロングヒットになって、経済の力学で当然のようにDVD化されてほしかった。
では、こっからはほんの触りをご紹介。

お堀端で夜釣りに興じる町人二人組が女幽霊に遭遇するところから物語は幕を開けます。彼らが駆け込んだ先では勝新がトレーニングの真っ最中。一物を左右の棍棒で念入りに殴打し、その場を離れると叩き台にはちんこ型の凹みが。続けざまに冷水を浴びせながら二人組の報告を聞きます。
さらにどこかにピストン運動すると足元には米粒が…。
米俵か!あんた俵に突っ込んで、自分の俵打ち付けとるんか!
すげー。とても有機物で出来てるとは思えない男性器を持つこの男、
「幽霊にも突っ込んでみてえなあ」
不敵に笑います。
彼こそ「カミソリ」とうたわれた敏腕町方同心「鬼の半蔵」でありました。
ついでに二人組は密偵のようです。
でもなあ。
二人組の片割れは蟹江敬三ですが、後に本物の「鬼の平蔵」の密偵を演じることになろうとは。なあ、粂八。
今度は半蔵が夜釣りに出掛け、女幽霊の捕物開始。
「照らせ!」
半蔵の号令一下、手下が手にした照明道具、そのまばゆい蛍光と指向性、明らかにサーチライトじゃねえか!
お江戸の科学力は世界一ィィィ!
そんな些末事はあっさり無視して、ざんぶとお堀にダイブした勝新、まるっこくなった中年ボディを褌ひとつで見せ付けながら幽霊に化けた美女を捕縛。水底にずっぷりと突き立っていた怪しげな竹筒共々そのまま連行します。
屋敷に戻って竹筒を切ると中からは打ちたて真っさらな小判が。
元幽霊に向けた半蔵の目が光ります。
「誰に頼まれた!…そうか、吐かねぇか。…お前ら、用意しろ!」
手下二人がハンモック様の網に女を入れて釣瓶経由で吊すと、その真下には横たわった半蔵が。
「下ろせ」
手下が綱を手繰ると…はい、予想は付きましたね。体育座り態勢の女に半蔵の鍛えぬいた鉄竿が、ずぷっとイン!
女が甘い喘ぎを漏らします。
「上げろ」
アウト!
イン→アウト→イン→アウト→…。
「どうだ!言わねえか。ようし!」
ハンモックもどきの編目をつかんで、ぐるぐる回転させましてシェイクシェイク!
いやがおうにも高まる喘ぎ声。
…いやさあ、小池一夫的演出はわかるけど、性器が全部直線で出来てるわけじゃあるまいし。
なんか怪物とか怪人っていうより、非情なマシーンと化している感があるぞ勝新。
かつて「マイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー」というゲームに「チンコロボ」という中ボスが登場したのを思い出しました。
i.jpg
↑前後に激しく動くそうです。
リアルちんこロボ、半蔵の苛烈な責めに参った女は「亭主に…」と言って沈黙。
「やけにいい具合になった途端に黙りやがった」
這い出した半蔵が改めると、女の首筋に小刀が突き立ちすでにこと切れていました。
死後硬直早っ!そらぁ、よく締まりますわい。
驚く半蔵たちを、どこからともなく現れた黒装束の一団が取り囲みます。
頭目と思しき男は、
・自分達は御金蔵番で、世相を反映してたいそう困窮していること。
・ある方の入れ知恵で御金蔵から小判を竹筒に詰めてお堀に落としたこと。
・人を寄せ付けぬため、奥さんを幽霊に仕立てて追っ払わせていたこと。
などをスラスラ話して「冥土の土産に聞かせてやろうタイム」終了。
大挙して半蔵に襲い掛かりますが、様々なカラクリを駆使して応戦されて手下は全滅。
「さあ、黒幕の名を言ってもらおうか…」
と引っ立てられる刹那、赤い鞘を抜き払った謎の使い手に切り捨てられます。
赤い鞘の浪人はそのまま逃亡。
手がかりを無くした半蔵、次はどう出る…?
御金蔵番を操っていた黒幕とは…?

とまあ、ひとまずここまでたったの15分ぐらいです。
前日観賞した『狼の紋章』と同じぐらいの上映時間ですが、物語の密度がまったく違います。
ちなみに脚本は巨匠・増村保造。道理で無駄がないわけです。

この後、半蔵はコマネズミのような上司(西村晃!)ともども老中(名和宏!)から召しだされ、御用金奪還の功績を誉められて金一封を貰うのですが、拒否した後で言い放ちます。
「いま巷には食うや食わずの侍が溢れております。蔵の御用金はどうか彼らの為お使いくだされ」
くう!この反骨っぷり!かっこいいぜ半蔵!
って、米俵にインサートしてた奴に言われたくありません。MOTTAINAI。

ストーリーの紹介はここまでで勘弁してください。
すげー疲れそうなんで…(T▽T)
さて、ここからはいよいよ実力派キャストが目白押しとなります。
名和老中に体を張って国難を説く、西洋かぶれの元侍医に高橋悦史。
名和の奥方は分別のタガが外れきった緑魔子。(ぜってー武家じゃねえw)
緑魔子ら盛りの過ぎた良家の奥方を招いては子分をあてがって乱交パーティーを主催していたとんでもない検校(※)こそが黒幕でして、演じるは小池朝雄!
小池朝雄といえば顔芸ですが、今回は盲目という役柄上、目をつぶっていなければいけません。顔筋を総動員してリミッター解除!さらに、そこはコロンボの声。渋ーい低音を自在にくねらせ、顔と声色の二穴責めで観客を唸らせます。
明らかに楽しみながら演じており、彼の下で剣を振るう赤鞘の凄腕用心棒、成田美樹夫が霞むほどの存在感を放っています。
かつて『不知火検校』という作品で検校を演じた勝新との絡みは、互いの芸風の違いが伺えて趣き深いものがあります。
勝新との絡みといえば西村晃との、アドリブと思しき速射砲のようなやりとりも見物です。
本筋とはあまり関係ないシーンなのですが、西村の落ち着きのないドタバタ演技に見入っているうちに、多元的に進行する物語の仕切り直しが完了している、という寸法です。
この愛すべき小役人という役柄を、これまた楽しげに演じる西村晃の身のこなしからは、恐るべき身体能力がかいま見えました。

それにしても、本作を彩る主要アイテム。
1、水草の中に突き立った黄金入りの竹筒
2、お尋ね者になった高橋悦史と共同制作した西洋大砲
3、半蔵の旧友が家宝の槍
…これ、みんなチンポのメタファーじゃね?
フロイトが見たら小踊りしそうなこの作品、下ネタは言うに及ばず、現在の感覚では視覚障害者に対してもかなり際どい扱いをしており(例/借金の取り立てに大量の視覚障害者を動員したり)、さらに正義の主人公たるべき半蔵も拷問侵入恐喝とやりたい放題です。
しかし締めるとこは締め、落とすところはきっちり落として、意外なくらい後味は爽やか。
達者な役者はやられっぷりもただただ鮮やかでして、(特に裃着たままドリフ爆発状態と化した名和宏はファン必見)勝新という巨大な星のもとには陰湿な影は落ちないと痛感した次第です。

※検校→現在に比べ眼病の罹患率が高かった江戸時代における、視覚障害者の互助組織の総元締め。巨大な権限を担っていた。
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