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2011公開映画ランキング [レビューなど]

TBSラジオの「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の「シネマハスラー」のコーナーで、今年公開された映画のランキングを放送しました。
年に一度のお楽しみ…と30位から21位までを聴いていたんですが、そこではたと気付きました。

俺のランキング、まだやってないじゃん!

と、いうわけで、ポッドキャストの方は自分のランキングに影響しちゃいそうなのでここで聴くのを中止。
毎年恒例の手前味噌企画、公開映画ランキング行きます!

今年観た本年度公開作品は58。 (12/20現在、過去作を含めると228本)
おお。けっこう観たものです。
個人的な傾向としては、洋画の話題作はけっこう観に行ったつもりですが、邦画の話題作はとんと食指が動きませんでした。(ヤマトもジョーも原作知らないし…)
従って今年に限って言えば邦画より洋画をたくさん観ました。そして、総じて洋画の方がレベルが高かったように思います。
いや、邦画はダメそうな作品を率先して観に行ったからか…。
何はともあれ、結果はこちら!(もったいぶってベスト10は後ほど)


11.スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団
12.コンテイジョン
13.X-MEN ファースト・ジェネレーション
14.沈黙の春を生きて
15.猿の惑星:創世記(ジェネシス)
16.スプライス
17.マネーボール
18.SUPER 8/スーパーエイト
19.人喰猪、公民館襲撃す!
20.ザ・ファイター


・岩波ホールで公開されたドキュメンタリー作品『沈黙の春を生きて』。
レイチェル・カーソンの名著をタイトルに取り入れ、アメリカ、ベトナム双方で今なお枯葉剤の被害に苦しむ人々を追っています。理不尽としか言いようのない障害を負いながら、それでも胸を張る人から尊厳という言葉の意味を考えさせられました。

・新宿バルト9で深夜にひっそりと公開され、パンフさえ売られなかった『スプライス』。
先述の「シネマハスラー」で、「ちんこ形のモンスターが血みどろ対決する!」と聴いて爆発的な使命感を覚え、2月の真夜中に自転車で駆けつけました。
モンスター育成リアルシミュレーションであり、妊娠中もしくは幼児を育ててらっしゃる方には絶対オススメできない悪夢のような作品です。大好き!

・佐清Vのメンバー2名と冗談半分で観に行ったら、実はホームランだった『.人喰猪、公民館襲撃す!』。
モンスター映画の王道を茶目っ気たっぷりに作りかえて見せた、愛すべき快作です。韓国映画の基礎体力をまざまざと見せつけられました。


21.MAD探偵 7人の容疑者
22.ソウル・キッチン
23.トランスフォーマー ダークサイドムーン
24.キックアス
25.フード・インク
26.トゥルー・グリット
27.ブンミおじさんの森
28.エンジェル ウォーズ
29.ファンタスティックMr.FOX
30.ミッション:8ミニッツ


・相変わらずカッコイイとしかいいようのない映像を職人的に紡ぎ出す、ジョニー・トー(今回はウォン・カーファイと共同監督)作品『MAD探偵 7人の容疑者』。
超能力ものであり刑事物であり相棒ものでもあるサイコスリラーです。いいから観てみなさいって♪
異能者の孤独をシビアに浮き彫りにする手腕は、デヴィッド・クローネンバーグの『デッドゾーン』に似た味わいでしょうか。

・.『トランスフォーマー ダークサイドムーン』。
派手で映像凄くて長くて、本年度最も疲れる映画でしょう。しかも3D。あなたわたしに死ね言いますか。

・アメリカの恐るべき食糧事情をチャキチャキとまとめたドキュメンタリー作品『フード・インク』。
TPP問題の予習に最適です。

・観た後は狐につままれたように思えた、パルム・ドール受賞作『.ブンミおじさんの森』。
『遠野物語』や『高野聖』にも似たアニミズム礼賛ですが、自然の中で命は時を越えて循環していて、自分が死んでもいろんなものが見守ってくれている…。そう気付くとなんだか泣けてくる。でも観ているときは眠れてくる…。そんな不思議で、とても美しい映画でした。


31.三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
32.サヴァイヴィング・ライフ-夢は第二の人生-
33.ゴモラ
34.ウィンターズ・ボーン
35.はだしのゲンが見たヒロシマ
36.キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー
37.まほろ駅前多田便利軒
38.セヴァンの地球のなおし方
39.大鹿村騒動記
40.わたしを離さないで


・何気に気に入ったのが単純明快で由緒正しいヒーロー活劇『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』。
分を弁えた脇役たちの活躍が爽快です。
ミラ・ジョヴォビッチのミレディもかっちょいい!
何も考えずにすっきり観られます。

・現代アメリカ残酷物語『ウィンターズ・ボーン』。
道路しか整った設備のないゴミだらけの寒村で孤立し、虐げられる弱者の姿を見せつけられます。
『フローズン・リバー』に近い位置づけですが、あちらには立場の違う他人と手を携えて未来へ踏み出していく希望がありました。
こちらには…。
アメリカの現在は日本の未来、と思うと真っ暗な気持ちになれます。

・このあたりからようやく邦画が現れます。『.はだしのゲンが見たヒロシマ』は取り立てて特徴のない、しかし手堅い証言映画。
上映後にテレビ電話で中沢啓治さんのメッセージが伺えてラッキーでした。

・環境問題を扱ったドキュメンタリー『.セヴァンの地球のなおし方』。
1992年リオで開催された環境サミットでスピーチをした当時12歳の少女は、その後も環境問題に取り組み、現在は一児の母親になっています。
二酸化炭素対策として推進された原発を「最悪の環境破壊」と言い切る彼女の眼差しが印象的でした。

・カズオ・イシグロの原作を先に読んでしまったので興ざめしてしまった『わたしを離さないで』。
いや、映画から観るなら十分アリです。


41.ありあまるごちそう
42.探偵はBARにいる
43.マイティ・ソー3D
44.共喰山
45.アンダルシア 女神の報復
46.トロン:レガシー 3D
47.エッセンシャル・キリング
48.星を追うこども
49.5デイズ
50.グリーン・ランタン


・北海道で大ヒットを記録した札幌周辺ご当地作品『探偵はBARにいる』。
「もしドラ」とは異なり、身体からしっかり作った大泉洋の本気を感じます。
しかし一番の収穫は高嶋政伸の悪役。これがけっこう恐い。エンドクレジットを見るまで誰だかわかりませんでした。まさにプロの仕事。

・46位以下はフォローする気が失せる作品が続きます。『トロン:レガシー 3D』は今年最高のがっかり映画でしょう。映像はいいんです。映像だけは。

・監督自らジブリ作品を意識したという『星を追うこども』。
驚異的なクオリティーで歴代ジブリ作品のエッセンスを抽出しており、元ネタ探しをせざるを得ません。これでいいのか…。

・2008年のグルジア戦争を、ジャーナリストの受難と見せかけてグルジアサイドから一方的に描いたプロパガンダ映画『5デイズ』。
プロパガンダならプロパガンダらしく、揺るぎない正義を見せて欲しかった。荒唐無稽でもいいけど、陳腐じゃ肩入れできません。

・DCコミックスのヒーローを映像化した『グリーン・ランタン』は、今年公開された作品の中でもトップクラスの馬鹿馬鹿しさではないでしょうか。衒いの無さに苦笑するしかありませんでした。
とりあえず、チラシの写真にはピンボケしていないものを使うべきだと思いました。


51.インモータルズ
52.海と自転車と天橋立
53.はやぶさ/HAYABUSA
54.ツーリスト
55.手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく
56.もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
57.セカンドバージン


・ここまでくると、どれもこれも「おすすめできない」どころか「観ないで!」と言いたくなるような老婆心まみれの感慨が込み上がってきます。

・嘘と悪趣味だらけの『インモータルズ』。

・客観性を欠き主題が空中分解している自己満足映画『海と自転車と天橋立』。

・陳腐な構成と、即席企画の化学反応が腐臭を放つ『はやぶさ/HAYABUSA』。

・2大スターの共演ながら、何から何まで予想通りの展開。世界的観光都市ヴェネツィアをちっとも美しく見せてくれない失敗作(断言)『ツーリスト』。

・30年前の水準で満ち足りている作画に、頓珍漢なキャスティングをあてて支離滅裂な物語が暴走する『手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく』。(チケットは350円)

・空恐ろしいほどの牽強付会をドラッカーの名の下に押し通す、霊言本すれすれのビジネス・ファンタジー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』。

・金を貰って観てやるレベルの『セカンドバージン』は誰もが寝ると思いますが、どうせ寝るなら寝床の方が健康的だと思います。
いや、これらの作品を観るぐらいなら明日のために寝ましょう。いいですよね、健康。


選外.機動戦士ガンダムUC/episode 4 重力の井戸の底で

↑ソフト発売に付帯したデジタル上映であり、イベントの一種なので評価の外とさせてもらいました。
てか、これだけでは作品全体の評価は無理ですし。
しかし巨大ロボットの戦闘シーンを巨大スクリーンで観る醍醐味を味わえましたぞ。館内満員でありました。



では、ベスト10行きます。


1.その街のこども 劇場版
2.サウダージ
3.英国王のスピーチ
4.Peace
5.東京公園
6.水曜日のエミリア
7.ブラック・スワン
8.イリュージョニスト
9.冷たい熱帯魚
10.スーパー!


・1位の『その街のこども 劇場版』は前年に放映されたNHKのドラマを劇場化したもので、阪神淡路大震災による心の傷を抱えた男女の交感をドキュメントタッチで描いています。(最下位の『セカンドバージン』もNHKドラマ。いったいどこで差が付いた…)
キャストはほぼ佐藤江梨子と森山未來だけ。この二人は実際に被災した経験を持ちます。
こういった、普通の人たちが出会い、衝突し、互いの違いを認識した上で手を携えていく作品が好きです。それは事の大小を問わず、人間という生き物の素晴らしい可能性だと思うからです。そのポイントが先述の『ウィンターズ・ボーン』と『フローズン・リバー』の評価の違いでもあります。
地味ですが、本当は手の届くところにある奇跡を照らし出してくれる名品でした。

・『サウダージ』かつての活気を失い、衰退の下り坂を転がっている地方都市、甲府を舞台にした群像劇です。
日本の地方行政、いや国策の失敗の成れの果てを在日外国人も含めて日常レベルで描き出しています。
これこそが本当の日本の姿かもしれません。
絵になる場面が多いのですが、ラスト、眩い商店街を歩いて行く回想シーンは本当に素晴らしい。
素人キャストも多いのですが、当事者(!)ならではの凄味も漂っています。
評判が評判を呼び、復活上映が相次いでいます。

・3位『英国王のスピーチ』は言わずと知れたアカデミー賞受賞作。
これも『その街のこども 劇場版』同様、「普通の人たちが出会い、衝突し、互いの違いを認識した上で手を携えていく」作品と言えます。(6位『水曜日のエミリア』もそう)
「普通の?」そうです。英国王もまた、弱くて孤独な一人の人間。身分というハードルを逆手に取った人間賛歌です。
これも泣いたなあ。


…うわ、すげー長文になってる!!!
長々とおつきあいいただき、どうもありがとうございましたm(_ _)m
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断片的な知識から悪口を言おう。(藤沢時代劇編) [レビューなど]

>『必死剣 鶏刺し』最後の40分を見た。藤沢時代劇は『武士の一分』しか見ていないのだが、今回もたったこんだけの話をダラダラダラダラ2時間かよ、とも思う。トヨエツの剣豪オーラがなさ過ぎて池脇千鶴や岸辺一徳の存在感に依存してやしないか。なんにせよ尺が長すぎて間延びが酷い。(続く)

>『必死剣 鶏刺し』『武士の一分』を最短で表すなら「パワハラ」の一語に尽きる。はっきり言って不快だ。ダラダラ続くからもっと不快だ。こんな映画観て面白いか?「藤沢作品は日本人の心だ」みたいなこと言ってる人がいたが、理不尽な階級社会、硬直化した組織、孤立する被害者…確かに日本社会だなw

>まあ、藤沢周平の作品にもいろいろあると思うが、よりによってこんな話ばかり映像化したがる連中の性根の濁り具合が恐ろしい。


↑というツイートを連投しました。
正確には『必死剣 鳥刺し』でしたね。「鶏刺し」ってなんだ。刺身か。
トヨエツ、頑張ってるとは思いました。最後の殺陣も渾身の演技でしょう。
でもね。
風呂入るシーンがあるのですが、トヨエツって案外乳輪がデカイ…じゃなくて!貧弱なんですよ!筋骨が無いのっぺりな身体。
佇まいはそれっぽかっただけに、殺陣で見せたいのなら物理的アウトラインをきちんと作って欲しいんですわー。
あるいは初めから肉体なんか見せない。だからその後に見る殺陣も、模造刀としか思えなくなります。
むしろ吉川晃司の方がずっと剣豪らしく見えました。藩主の分家で剣豪って設定そのものがおかしいと思いますが。
東洋人だから、っていう言い訳は聞きませんよ。『グッド・バッド・ウィアード』のイ・ビョンホンとかご覧なさい。そりゃもう凄いんですから。いや、『少林少女』の仲村トオルでもいいや。あんな作品には勿体ないぐらいちゃんと身体を作ってました。

池脇千鶴の時代劇特性は相変わらず盤石かと。時代劇で間を持たせられる女優さんですね。
ただ、あんな濡れ場はいらんだろ、とも思いました。どうせ露出もしないのならあんな直裁的な場面はいらない。そもそも濡れ場自体が作風とは合わない。それっぽく匂わせるだけでいいはずです。
見せないなら濡れ場なんかいらない。形だけの濡れ場なんてAVに失礼です。(違う)

でまあ、「鳥刺し」ってどんな技なんだろ?って思って見てたんですが…なんだよ「○○○○○」かよ!そら「必死」が前提だわ!
映画に「秘技」は数あれど、これ程がっかりさせられる技もそうはないかと。

閑話休題。
ツイートでも触れましたが、本作や『武士の一分』など近年流行中のパワハラ時代劇は社会の理不尽を経験し尽くした大人たちの、
「そうだよな、世の中なんてそんなにうまく行かないよな。俺たちは使い捨ての兵隊だったもんな。ああ、今生きててよかった!」
という、実に夢も希望もない後ろ向きな現状肯定のためにあるんじゃないかと。
そりゃ、現状に不満があったり、明日に夢を持ちたい人には不向きだよなあ。
過去の同系作品としては『切腹』が挙げられるでしょうか。おそらく今年のリメイク作品『一命』も、上記のような客層を当て込んでいるのだろうと推測します。
でもあちらは、組織の腐敗っぷりに終始せず、江戸前期という時代背景と密接に関わった武士階級全体の悲劇を背景にしています。「敵」のスケールがでかい。
たった一人で立ち向かうのなら、強力な敵を向こうに回すほど盛り上がります。
『武士の一分』一番のお笑いシーンは、クライマックスの「上司に向かってその口のききかたはなんだ!」という忘年会の課長的な台詞が飛び出すところです。これはそのまんま「敵」のしょぼさを表しています。
盲目となってなお、血を吐くような修練で剣の腕を磨き、倒す相手はセクハラ上司…(泣)こりゃあんまりです。
企業エレジーなら現代劇でやりゃあええんです。それをネチネチと時代劇経由でやるなや!褒めるなや!現実見ろ現実!

何歩か譲ってそういう話を作るなら、そういう話に適した見せ方があるはずです。
無駄に風景描写で叙情を醸し出したり、含みを持たせて(しかもあまり有効な伏線とはなっていない)間延びさせたりしないで欲しい。どうせろくな話じゃないのだから。
どうせ綺麗に作るのなら『雨上がる』のようにテーマと作風をきちんとリンクさせて欲しい。それが作り手としての筋の通し方だと思うのです。
「くだらねえ会社の腐った組織に翻弄されっぱなしの善良な主人公の怒りがついに爆発だ!」
という話なら、チャールズ・ブロンソンやスティーブン・セガール的なB級感で突っ走ればすっきり観られる…とは思うのですが。

問題は作劇そのものではなく、現代の「時代劇感」そのものにあるのかもしれません。
昨今時代劇を見たがる客層が、「景色とか雰囲気とかを妙に気にして、絵空事をあざ笑う、ゴシップ好き中高年」と想定されているのではないでしょうか。(下衆いのが好きならそれでいいんです!俺も大好きだ!)
そんな作り手の見通しこそが、「見栄えがよくて、しみったれた、実も蓋もない」作品が連発される理由じゃないかと思う次第なのです。

最後に。
でも去年は『十三人の刺客』はあんなにヒットしたわけで、周到に作れば悪趣味血みどろチャンバラだってイケると思うのです。(ラストにはむりやり現代的解釈に持ち込むような泣き言もありましたが)
時代劇は手間がかかって制約だらけという側面もありますが、日本映画だけが持つ何でもありのワンダーランドでもあります。
豊かな作例もあり、過去の名作に目を通すだけでも、面白くて客を呼べるものは作れると思うのですが。

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『コンテイジョン』(若干ネタバレ有り) [レビューなど]

 今回は珍しく、公開中の映画のレビューなど。


 香港から出張の帰り、ちょっぴり不倫も楽しんで帰宅したキャリアウーマン(グウィネス・パルトロワ)。あらやだ咳が止まらない…。発熱!痙攣!入院!死亡!
 病院で途方に暮れる旦那(マット・デイモン)だが、その頃家では風邪気味だった息子も同様の症状で死んでいた。
 香港で、ロンドンで、東京で…死者が発生。強い感染力と高い死亡率を持った未知のウィルスは世界的感染爆発(パンデミック)の様相を呈し…。


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『幻の湖』 [レビューなど]

(2010年10月に観賞してmixi日記にアップした文章を転載しました)

邦画史を代表する名脚本家の一人、橋本忍が満を持して放った問題作です。(おまけに東宝創立50周年記念作品)
大雑把に要約すると、飼い犬に先導されてジョギングするのが趣味の雄琴のソープ嬢が、ある日飼い犬を殺され、その犯人に復讐を試みる、というだけの話なのです。
風俗モノというよりも、琵琶湖周辺のスポットを観光風味で拾い上げたジョギングスポ根復讐譚、といえます。
この時点でも視点がぶれていますが、怪しい外人ソープ嬢(実はアメリカのスパイ)、見晴台で笛を吹いている怪しげな男(実は宇宙飛行士)、主人公の源氏名であるお市の方にまつわる悲恋物語(実はお市はあまり関係ない)などの脇道が配置されており、これらの寄り道がいちいち冗長なテンポで描かれているので2時間40分という長大な作品となっています。
これらの要素が相乗効果を果たしているのではなく、ことあるごとに相殺しあっているので、好事家は目が離せない作品となっています。

さあ、こっからネタバレ全開でいくわよ!

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『セカンドバージン』 [レビューなど]

各所の酷評を伝え聞き、Yahoo!映画では驚異的な「1.77」(5段階評価)というアベレージを叩き出していた『セカンドバージン』を、ファーストデーを利用して観賞してきました。
NHKで放映していたドラマは未見なのでなんとも言えませんが、映画単体でいうなら紛れもないダメ映画でした。
(以後ネタバレ全開です)

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『アナタハン島の真相はこれだ!!』 [レビューなど]

 6月1日、アテネ・フランセ文化センターにて『これがアナタハンの真相だ!!』を観賞しました。
 終戦を挟んだ1945年から1950年にかけてサイパン南方のアナタハン島で、32人の男性と1人の女性が共同生活することになり、やがてその女性、比嘉和子さんを巡って殺しあいに発展したとされる「アナタハンの女王事件」の再現映画です。

 参考→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%82%BF%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 本作は比嘉さん自身が本人役で出演していることで話題を呼びました。(ちなみに監督も吉田とし子さんという女性がつとめています)
 内容はといえば、ブームに便乗したものなので下世話といえば下世話であり、当人も腰蓑やら透け乳やらミミズ食いやらを披露しちゃったりしているので「猟奇的」という表現もできましょう。
 話題性一本勝負でしょうから、見世物としては退屈で、映画としては出来が良くありません。
 まず、比嘉さんの演技力がない。序盤の踊りのシーンは二足歩行の地虫の断末魔のようですし、暴力を振るう男から逃げるシーンもモソモソしてまるで緊迫感がない。表情はほぼ無に等しく、常に太陽を直視したような、まぶしげな顔付きです。
 あと、当人の証言以外に情報がないので、本人が語らないことは描かれません。ご都合主義とも思える展開は言うに及ばず、疑問点も多く残りました。(例えば比嘉さんは腰蓑の後で突如ワンピースを着ていますが、これも実際は米軍の墜落機から拾ったパラシュートで誂えたものだそうです。映画ではこの辺の説明は一切なし)
 何より、比嘉さんの容姿が画面映えしないというのは決定的です。体型的には男か女かわからないタイプの寸胴で、顔立ちは横光利一やストロング金剛に似たタイプです。
 しかし、作中では「土人」の青姦に眉をひそめた男達は「でも、あの和子って女、なかなかいい身体してるじゃねぇか」とか言ってます。

「土人」!
 この事件のイメージは「1人の女と30人の男」というものですが、当初は農場で使役されていた現地民がいたのです。
 映画ではいつの間にか姿を消していますが、実際は戦争が終わって投降を呼びかけた米軍の船に乗って島を離れていったのだそうです。
 本作でも、拳銃の最後の一発を使ってまで、輪になって踊っていた「土人」たちを追い散らして笑っている男達の描写があります。(このあと墜落機が発見され、そこで新たな拳銃を入手したことが殺しあいのきっかけになる)
 比嘉さんは沖縄人です。「大和人」である男達は彼女をどう扱ったのか。
 唯一の本土戦であった(はずの)沖縄がどうのような戦場であったかを思い起こせば、自ずと想像がつくように思えます。
 比嘉さんをゲットした男達の行動はワンパターンです。銃で脅す→所有する→暴力で支配する。誰も彼もこの繰り返しです。(半面、彼女の境遇を哀れんで匿ってあげる人も描かれています)
 これを従来の「男と女」という軸で理解することは割合容易いでしょうが、当時の日本人がそれ以外の人に向けた差別意識もまた、本件を語る上で見過ごせない要素でしょう。
 もっとも、全ては比嘉さんの言い分なので「真相」はわからないのですが。彼女を所有し、次々と不可解な死を遂げていった男性たちが銃を持っていたのなら、唯一彼女だけが常に銃の側にいたことにもなります。

 比嘉さんの例のまぶしげな表情は、常にビクビクと暴力に怯える様子にも似ています。彼女が組み敷かれるシーンでもその表情は変わらず、絶望というより「イヤだなあ」とでもいった嫌悪しか感じられません。
 周囲から見れば「極限状況の悲劇」でも、当人にとっては「忌ま忌ましい日常」だったのかもしれません。いち いち絶望したり身の上を歎きつづけるには5年の月日は長すぎたのかもしれません。
 センセーションを呼んだミミズ食いも「あら、ミミズ」とでもいった気軽さでパクっ、ムシャムシャっとやってる印象です。
 あのような状況から生還した人の感覚は、そうでない人のそれとは相当に遠く、異質なのだとも思えます。
もっとも、全ては比嘉さんの胸ひとつなので、ひょっとしたら生れつき途方もなくぼんやりした人だったのかもしれません。

 比嘉さん自身はリアルに演技しているのかもしれませんが、そのテンションと役者陣の演技が噛み合っていないので、酸鼻を極める内容であるにもかかわらず画面からは緊張感がまるで漂ってきません。
 ラストシーンは比嘉さんが米軍の船舶まで逃げ切った後の事なので登場しません。彼女がいてはオチにならない、という演出上の配慮かもしれません。
 散々仲間内での殺しあいを経験してきた男達が、いまさら裁判のような事をはじめ、刃傷沙汰を起こします。
ようやく盛り上がったような気配が漂いはじめたあたりで、生き残った兵士が海へ向かって「おかーさーん!」と叫んでブチッと終わります。

 想像を絶する(でも真相はわからない)経験を経て、いち早く米軍に保護され、センセーションに答えるように映画に出演し、観る者がゲンナリするような演技をきっちりこなした比嘉さん。
 オープニング・ロールでは颯爽と車で乗りつけ、冒頭で「この度の事件で命を落とされた方々のご冥福をお祈りします」とのテロップをバックに崖の上から海を睨む比嘉さん。
 事件の真相はわかりませんが、この映画の真価はその内容の外にある…なんてはじめからわかっていたような結論に逆戻り。
『藪の中』より『藪の中』。
 映画で言うなら『羅生門』より『羅生門』な映画であります。

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『ゴジラ対メガロ』 [レビューなど]

ゴジラシリーズに登場する唯一の人型ロボット、ジェットジャガーを観たい観たいとおもっていましたが、今回ようやく念願かなって池袋新文芸坐へ行って参りました。
「脚本 福田純」
というクレジットを見て嫌な予感はしてたんですよ。
ちなみにゴジラシリーズは、ほぼ本多猪四郎と福田純という二人の監督さんが撮っているのですが、前者は人間ドラマ、後者は怪獣アクションに力を置いています。
で、福田監督の作品はどれも子供だまし、というかいい加減な話が多いように思っておるのです。
しかし今回は違いました。
「子供だまし」どころのレベルではなかったのです。


北太平洋の核爆発実験によって被害を被った海底の超文明国家「シートピア」は、地上人への報復として怪獣メガロを目覚めさせ、東京へ向かわせます。
ちょっと待て!
こと核実験ならば、日本は100%関係ありませんから!
シートピアのリーダーはポセイドンみたいな格好をした凄い体毛の中年白人男性なのですが、どうやら国民はみな白人らしく、地上へ派遣された工作員2名も白人男性。
彼らが向かった先は発明オタクっぽい兄弟の家。
電子工学のスペシャリストである兄は、なんと人型リモートコントロールロボット「ジェットジャガー」を独力で開発していたのです!
どういう原理かわかりませんが何も付けずに自由自在に飛行できるジェットジャガーを、東京へのナビゲーターと見込んだシートピア人。
まんまと兄弟とその友人を縛り上げ、ジェットジャガーの奪取に成功します。
先進的な科学力を備えたシートピア人は、地震を起こして地割れを生じさせ、そこから地上と行き来することができます。
地上の征服には大量のジェットジャガーが必要と踏んだシートピア人は、開発者の兄とその幼い弟をコンテナに閉じ込め、本国に拉致するために最寄りの地割れに放り込むべくトラックを雇います。
なんかこのあたりの貧乏臭さ、とても高度な文明を持つ連中とは思えません。

一方、友人の方は用がないので研究所で縛り上げられていましたが、そこからジェットジャガーに指示を与えていた工作員を倒し、トラックの後を追います。
トラックでは「地割れのある湖は遠いから、このへんのダムにコンテナ落としちゃおう」とか駄々をこねる運転手(他1名)を工作員が銃で脅していましたが、隙を見て急斜面から落とされてしまいます。
うわ、殺されちゃったよ!w
荷台を傾けて今にもコンテナがダム湖へ落ちる、というそのとき、なんとジェットジャガーに導かれていたメガロがダムを破壊!
ちなみにこのメガロ。カブトムシの角にセミの顔、背中にはカミキリムシの羽といったある意味わかりやすいデザインです。
おりしも駆けつけた友人の目の前で落下するコンテナ…とその時、メガロがレシーブよろしくコンテナを跳ね上げ、そのまま隣の山の頂上へ着地!ちょうど蓋も外れ、兄弟は無事に脱出します。
って、こら待てー!

その頃メガロには自衛隊が攻撃を加えていました。
メーサー殺獣光線車まで動員するもどこかで見たような使い回し映像(『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』など)も交えた戦闘の末、壊滅します。
そこへ颯爽と現れた兄は、非常時のために超音波で指令できるペンダントでジェットジャガーを奪い返し、そのまま怪獣島のゴジラを連れてくるよう指令します。
友人と弟はラジコン飛行機などを駆使して研究室の工作員を撃破、戻ってきた兄と合流します。
しかし、そこへメガロが。
あわてて非難する3人。逃げ遅れた工作員はメガロが吹き飛ばした大岩の下敷きとなって死亡。

無事ゴジラとのコンタクトにこぎ着けたジェットジャガーは、謎のボディーランゲージを駆使してゴジラの同意を得ます。
海を泳ぐゴジラに対し、空を飛ぶジェットジャガーは一足先にメガロの元へ。
メガロと対峙したジェットジャガーはみるみるうちに巨大化します。
余りにも意外な展開です!
それを目の当たりにした兄。
「ゴジラが来るまでは自分が持ちこたえなきゃいけないという強い意志が、かれを巨大化させたんだ!」
みたいなことを口走る。
ふざけろ。いや、いくらロボットとはいえ、精神論でどうにかなる問題じゃないと思うぞw

目覚ましい戦いぶりでメガロを追い詰めるジェットジャガー。
しかし突如、高速で飛来してきた怪獣が襲いかかります。
彼こそは、凄い体毛のリーダーが電話一本で呼び寄せた宇宙怪獣、ガイガンでした。
なぜガイガンを作った宇宙人が縁もゆかりもない海底人に力を貸す気になったのか、一切触れられません。
メガロとガイガンに代わる代わるストンピングを見舞われるジェットジャガー。脇腹から火花が散ってショート寸前です。
そこへようやく我らの味方、ゴジラ登場。
ここからはアクション主体の福田監督の見せ所、2対2のタッグ戦の様相を呈してきた戦闘をじっくり描きます。
まあ、いろいろあって空中から攻撃を加えるガイガンをジェットジャガーがたたき落とします。
あれ?さっきまでショートしかけてたのに…。
さすが根性で巨大化したロボットはひと味違います。気合いだー!
メガロはといえば、仰向けに倒された状態で口から飛ばした爆弾を口の中に落としてしまい、頭部からぶすぶす煙を出す有様。
なにやってるんだよ!
ガイガンはしっぽを巻いて逃げ出し、メガロも体毛リーダーの撤退命令で閉じゆく地割れの中に姿を消しました。
あれ?根本的な問題はなにひとつ解決してないような気がするんですが…。

栄えある勝者、ゴジラとジェットジャガーは固い握手を交わします。
そして海の彼方の怪獣島へ帰っていくゴジラ。
かたやジェットジャガーは駆け寄ってきた3人組の前でしゅしゅしゅ、と元の大きさに縮み、ともに家路につくのでした…。


攻撃目標の明瞭な誤り、ジェットジャガー突然の巨大化、なぜ海底人がガイガンを呼べるのか、など観る者をぶっちぎりで置き去りにしていく破綻っぷりは、「子供だまし」で片付けられるレベルではありません。
確かに制作サイドは低予算に頭を悩ませていたそうですし、極めて限られたキャストと映像の使い回しなどからそのへんの台所事情は察することが出来ます。
でも、予算の多寡以前に、ストーリー自体が破綻してませんかねえ?
数あるゴジラシリーズでも福田監督自身が脚本を担当したのは本作だけです。
このへんに、突き抜けたトホホ感を解く鍵があるのではないでしょうか。いや、そのまんまか。

ちなみにこの作品、おそらく本来の意図とは別に大いに楽しませてもらったので、終劇に合わせてノリノリで拍手したのですが続く人はいませんでした。
これでは自分がバカみたいじゃないですか!
悔し紛れに物販で岸田森のブロマイドを買っちゃいましたよ。
まるで意味がわかりませんね。はい。
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『ゴースト もう一度抱きしめたい』評(ネタバレ上等) [レビューなど]

ダメ映画を期待して観にいって、期待通りだったのですが、実はなんというか、語る気が起きません。
リメイクとしてはかなりネタ元に忠実な作りですが「手堅い」とはならず、どこまでも「陳腐」な印象です。
かといって「ふざけるな!」「金返せ!」などとリアクションを起こすこと自体がどうでも良くなってきます。
この無気力はいったいどこから来るのか?この根っこはけっこう深いのではないのか?
そして、その理由にはすぐ思い至りました。
この主人公にうまく感情移入できないのです。
松嶋菜々子が演じるのは、高層ビルに小綺麗なオフィスを構えるけっこうな会社の社長ですが、自分の誕生パーティー酔っ払った挙げ句、夜の噴水で出会った陶芸家の家に上がり込んでそのまま就寝、素面に戻った朝に彼の横っ面を張り飛ばして出てきます。
これが、妙にいやらしい格好なんですね。まー、パーティーの装束ならそれもいいでしょうが、こいつはこのままテレビのインタビューを受け、新宿や渋谷の街頭モニターに映し出されます。
さらにその合コンルックのまま出社して、テキパキと指示を出したりしてます。
…こういう人、どう思います?
思慮も分別もないくせに、馬力だけは人一倍で、周囲の保護欲を掻き立てては、その善意に無自覚に依存したまま、人の上に立ちたがる人。
こういう人が不幸な目にあったからって、同情する気になれますかね。

そもそもネタ元の『ゴースト ニューヨークの幻』でデミ・ムーア(当時の)が演じた陶芸家の女の子は、どちらかといえば甘えん坊で世間知らずで、主人公ならずとも「しょうがねぇな」と舌打ち混じりに手を差し伸べたくなるようなキャラでした。
だからこそ主人公は、心配でろくすっぽ成仏もできなかったわけです。
そんな頼りない女の子が、出会いや試練を経て、人の悪意と善意を知り、主人公の深い愛によって自信を得ることで、ひとりの人間として成長する。
『ゴースト ニューヨークの幻』そんな物語でもあるわけです。
男女の役柄が逆になった今作では、残された陶芸家は韓国人で日本語が不自由とはいえ、なかなかのしっかり者です。かつマッチョ。
オリジナルと異なり、生死を隔てたカップルに頼る頼られるといった力関係の差はありません。
だからこの女社長、死んでもなお高飛車に見えるんですね。さも当然のように人に頼る。樹木希林演じる霊媒師に無理を言う。傍目にもこの女社長は幽霊になってなお人間的成長が伺えません。
というのも、オリジナルの主人公は二人の悪漢がか弱い恋人を襲うのを阻止するわけで、そりゃ観ている方も応援したくもなります。
しかしこのリメイクでは、悪漢は親友(♀)とやくざ者とスケールダウンしており、しかもこいつより陶芸家の方が強そうです。「恋人を危機から救いたい!」とは思っても「守りたい!」とは思えないのです。
キャラクター設定の時点で既に明後日の方向を向いていますし、この作品を企画した人たちがオリジナルに愛着を持ち、きちんと理解していたとはとても思えません。

このように設定からして既に甘さが伺える本作は、随所に緩みが見られます。
まず主人公の親友、同僚とかならいざ知らず、真っ先に社長にばれるような使い込みしてんじゃねぇよ!アホか!
彼女曰く、女社長を指して「彼女とは大学以来のつきあいだけど、その頃からしっかりしてた。私は彼女の引き立て役」なんて言ってましたが、一般的な見地から判定するに、程度の差はあれどちらも馬鹿者です。
わざわざ韓国から来て、こんな連中のしょうもないトラブルに巻き込まれた陶芸家が気の毒でなりません。
ついでに便利屋。仕事が荒っぽい割には何故か前科無し。
終盤で陶芸家を武蔵小山と思われる商店街の衆人環視の中で襲います。絶対警察来ますからw
アホか!
さらにさらに、刑事が二人出てくるんですが、こいつらが揃いも揃って無能です。
菜々子タンが死んでから陶芸家宅を訪れ、「あんた、陶芸だけで食っていけるの?遺産目当てで殺したんじゃない?」などと単刀直入に尋ねます。
確かに自活できているかは気になるところではありますが、本人を前にどうこう言う前に、まず自分達で調べろよ!これじゃ単なる言いがかりです。
つまり、メインキャストが大抵バカなんですな。いや、オリジナルを見直せば、案外こんな連中だったのかもしれませんが、少なくとも気にはなりませんでした。
樹木希林演じる霊媒師は例外で、コミカルな性格の割にもっとも常識を弁えているように思えました。演技の安定感もあって、この人が出ているシーンだけはかっちり観ることが出来ました。
じゃあ、他の部分は?
おしなべて冗長です。
もう何から何までダラダラダラダラ。
ついでにしょっちゅう韓国語が混じるので、たどたどしさに拍車がかかります。
また登場人物達は心情をそのまま口に出してくれるので、だいたいのシーンは目を閉じていても差し支えありませんでした。
テレビと違って映画では副音声を入れられませんから、そのへんを配慮してくれたのかもしれませんね。
あと、盛り上げ所はだいたい顔アップ。漫研部員の習作マンガじゃないんだから。
で、物を掴めなかったり壁をすり抜けたり、という特殊効果が『ゴースト ニューヨークの幻』と変わりません。何年たってんだよ!その辺VFXの見せ場だろうが!

ここらで整理しましょう。
・キャラクター設定が根本的に間違い。
・観る側の感覚を無視した稚拙な演出。
さらに、許せない、というか笑い所となってしまっている見過ごせないシーンがあります。
『ゴースト ニューヨークの幻』といえば、セットで思い浮かぶのはテーマ曲の「アンチェインド・メロディー」。
今回も印象的なシーンで2度使われますが、なーんか英語の発音が辿々しい。ネイティブじゃないので妙に気になっちゃうんですが、よく聴けば平井堅じゃねえか!
こういうところでオリジナルを使うんだよ!もー!台無し!w
ここに本作の陳腐さが凝縮されていると言えるでしょう。

そもそも、こんな企画を日本映画がやるからこんな出勤前の下痢のような緩みきったテイストになってしまうんであって、いっそ韓国に作ってもらって、松嶋菜々子だけが日本人で出演したほうが、まだマシな出来になったと思われます。
なまじ忠実にリメイクしてしまっただけに、違っている部分の方が悪目立ちしています。
菜々子タンにスキルを伝授する幽霊(オリジナルでは地下鉄の駅にいる老人)は病院の少女になっていますが、これが妙に世慣れてて気持ち悪い。とか。
あとだいたい、日韓共同という作り手の狙いが浅知恵だと思われたらこの作品、おしまいでしょう。ていうか、いったいどこを狙ったんだどこをw
テレビドラマから時間的制約を取り払ったような、切れの悪い便のような映画はもうたくさんです。
今回の戦犯局は日本テレビでした。なんだかなー。
誰が得するのかわからない、どんな人たちをターゲットに作られたのかさっぱりわからない映画でした。
ちなみに劇場で鑑賞していたのは、自分を含めて4人でした。合掌。
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『怪猫トルコ風呂』(ネタバレあります) [レビューなど]

去年の12月に観賞してmixiに載せたレビューですが、こちらに転載するのを忘れていました。
室田日出男ファンの端くれとしてお恥ずかしい限りです。


ポーの『黒猫』と男の憧れが夢のコラボレーション!情夫を信じた挙げ句、お腹の子供もろとも責め殺されたトルコ嬢。なおも止まぬ悪業に、黒猫パワーを借りた彼女の怨念がトルコ風呂で炸裂!実質的な主人公は鬼畜のホームラン王、室田日出男。今度の日出男は犯す殺す隠す!三位を極めた後に、はらわた垂らして誅される熱演を見よ!バカな企画に煽られた物見遊山の野次馬を本気で後悔させてやれ!全力で描かれる虐待シーンも凄まじい怒濤のバイオレンスホラー。(☆☆☆☆)


あまりにも無茶なタイトルにホイホイ釣られて観ましたが、これが本気なのか破れかぶれなのか、かなり血みどろのホラー作品でありました。



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『ナイト・トーキョー・デイ』(ネタバレあります) [レビューなど]

スペイン映画界期待の女性監督&菊地凛子という組み合わせでなにかと話題になり、カンヌ映画祭のパルムドール候補にさえなったという本作。
「女体盛りがある」
という情報に惹かれて観にいきました。


続きはこちら


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